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第六話「桜姫昇天」



 観世音寺にまつられた観音様は、生きておられるように、つぎつぎと起こったといわれています。お堂では観音様にお経をあげておられる姫を、そっとのぞき見すると、堂の内(うち)では、観音様と姫が楽しそうに語り合っておられたとか、姫がお堂にこもられたときには、観音様と姫とが、立派なお膳に向きあって食事をしておられる姿に見えたとか、姫が病で床につかれると、観音様が枕元にすわって看病しておられた、といった話しが伝わっています。
 また姫は病に苦しんでいる人があるとすぐに見舞われ、お経をあげて病をなおし、食物がなくて困っている人には食物を与え、乱暴する人にはやさしくさとし、神様や仏様をおがんだことのない人でも、桜のお話を聞くと神・仏に手を合わせるようになった、といわれています。このようなことから桜姫は観音様の生まれ変わりではないか、といってうやまいました。
 しかし仏様のようだった桜姫も、とうとうこの世での命が終わり、なくなられました。これを聞いた人々は、母親を失った子供のようになげき悲しんだといわれています。
 いよいよお葬式の日がきました。悲しみの列が桜谷にさしかかると、鷲峰の山から五色の雲がおりてきてあたりをつつみ、きれいな音楽の聞こえるなかを姫のなきがらは鷲峰の山へ静かに上ってゆきました。あまりの不思議なできごとに、人々は桜姫は鷲峰大明神の化身(けしん)ではないか、と語りあったということです。
*桜姫は、1041(長久(ちょうきゅう)2)年3月19日に、46歳で亡くなられたそうです。

(おわり)


 

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