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第五話「桜姫参籠(さんろう)」



 加知弥親王の思いがけない死によって桜姫は世の中の無情を感じ、仏道に深く心をよせられ毎日お経を唱えて暮らしておられましたが、仏様の本当のお姿を一目拝みたいと思われ桜谷南の坊におこもりになられました。三七、二十一日の満願の日、夢うつつのうちに光に引き寄せられて大きな桜の木のそばに行かれると、そこに観音様がたっておられ、「姫よ、姫。ここにおいでなさい。」と手招きしておられます。そして観音様は、「姫よ、よく私を見て心にとどめ、仏像をつくって世の中の人々に拝ませてください。」といわれ、そのお姿はかき消すように見えなくなりました。しかし姫の心の中にはそのお姿がはっきりと焼きつき、耳の底には観音様のお声がはっきりと残っていました。
 桜姫は桜の霊木の枝を切り、観音様を彫ることにしました。お経を唱えながら心に焼きついている観音様のお姿を彫り続け、やがて立派な観音像が完成しました。桜姫はこの観音像を桜谷南の坊におまつりしました。このためこの寺は観世音寺と呼ばれるようになりました。

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