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第三話「紀氏と桜姫」
第66代の一条天皇のころ(986〜1011)、殿村に気(け)多郡(たごおり)の郡司(ぐんじ)として紀氏がいました。当主は氏郷(うじさと)といい、大きな勢力を持っていました。氏郷の父氏常(うじつね)は末用に隠居し、末用の前(さきの)大納言(だいなごん)と呼ばれていました。氏常は正歴(しょうれき)元年(990)に鹿野の東、獅子舞山(ししまいやま)に涅槃寺を建て一条院を弔ったといわれています。
氏郷は世の中が乱れたのを心配して、山陰道八ヶ国の鎮守として、愛宕(あたご)大権現(だいごんげん)をまつろうとして、殿村の館に近い普瀬井(ふせい)の山をえらびましたが、大嵐となり社地(しゃち)を鹿野に移したといわれています。
紀氏は代々気多郡の郡司として、良い政治をおこなって民からしたわれていました。この郡司の氏郷に桜姫という花のように美しく気だてのやさしい姫がおられました。姫は学問にもすぐれていましたが、何より姫の心をとらえていたのは、慈愛に満ちた御仏(みほとけ)の道だったといわれています。
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