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第二話「桜谷南の坊」



 玉川を立ち去った弘法大師は、流沙(りゅうしゃ)川(河内川)をわたって、鷲峰の霊峰をあおぎながら、桜谷へ進まれました。ここには鷲峰山の霊気を受けて育った大きな桜の木がありました。大師はこの桜の木を見ているうちに、なんともいえないすがすがしい気持ちになり、桜の大きな枝で不動(ふどう)尊(そん)を刻むことを思いつかれました。そこで清らかな谷川の水で身体を清め、神仏に祈ってお経をとなえながら一心に不動尊を刻まれました。やがて苦労のかいがあって、2尺8寸(約85m)の立派な不動尊像ができあがり、百日のお祈りをささげられました。これを知った村人たちの間にお堂をたてる話しがはじまり、やがて力を合わせてお堂を建て、弘法大師の刻まれた不動尊をおまつりしました。
 これが桜谷南の坊です。弘法大師はこれを見とどけると、やぶれ僧衣(ごろも)に網代笠をかぶって、次の行脚のためにひとり旅立って行かれました。この不動尊像は、いま、観世(かんぜ)音寺(おんじ)にある金比羅(こんぴら)様にまつられているそうです。

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