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 蟹の甲


 譲伝寺は曹洞宗(そうとうしゅう)のお寺です。昔は鷲峯山の麓、古仏谷の奥にありました。そのころのお話です。お寺の近くに明星ヶ渓(みょうじょうがたに)という谷があり、ここの蟹ヶ淵(かにがふち)という深い淵に一匹の年老いた蟹が住んでいました。この蟹は全身が鉄の鎧を着ているように、堅い、堅い甲でおおわれ、刀や槍で突いても突きとおすことはできないようでした。そしていつも淵の底にじっと潜んでいて、獣や人がそばを通りかかると飛び上がってつかまえて、水の中に引き込んでしまうのです。村々の人々は困りはててお寺に相談に行きました。
村人たちの話しを聞いた和尚さんはお経を唱えながら蟹ヶ淵にやってきますと、すぐに蟹に話しかけました。仏の道を教え人や生き物の命は大切にしなければならない、とさとしますと、老蟹も感じることがあったのでしょう。それから毎日朝・晩の和尚の読経(どきょう)を聞きにお寺にやってきました。そして仏のお導きによってとうとう自分の甲を脱いで、和尚さんに捧げたといわれています。この蟹の甲はいまも譲伝寺の寺宝として伝えられています。

いたずら河童


 蟹の甲のお話しと同じころ、古仏谷の奥の譲伝寺から坂道を下りたところに河内川が西から東に流れており、ここに大きな深い淵がありました。いつの頃からかここに一匹の河童が住みついて、伯耆に越える旅人たちの荷物や弁当を失敬したり、淵で水浴びする子供たちに悪さをし、近くの畑の作物をもぎ取って食べたり投げ捨てたりしました。
困った村人たちは和尚さんに相談にいきました。和尚さんは早速淵にやってくると、河童のいたずらで村人が困っていること、いたずらはほどほどにするように、とこんこんとさとして帰られました。
それからはこの河童はあまりいたずらをしないようになり、たびたびお寺にやってきて和尚さんの読経や説教を聞くようになったといわれています。
この二つのお話しは譲伝寺の九世忠岳(ちゅうがく)宗恕(そうじょ)和尚のときのことと、伝えられています。


 

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